同時刻、庁舎前広場から2qはど離れた高層ビルの屋上から、勝負を見下ろす二人の男がいた。
年齢は二人ともユニックスと同じくらい。一人は橙色の逆毛の男。もう一人は銀色の短髪の男。
「何やってんだかな、あのバカは」
苛立ち混じりに逆毛の男はつぶやいた。
決して彼の危機に焦っているわけではない。ただ自分が仕留めようと思ってもなかなか仕留めきれなかった男が、こうもあっさり倒されようとしていることが納得できないようであった。
「必殺。お前はあの勝負をどう見る」
「………………」
必殺と呼ばれた短髪の青年は数秒沈黙したのち、
「普段の奴であれば十中八九あの男の勝ちに終わるだろう。しかし今の奴は抜け殻だ。このまま彼女が手を誤らねば、負けるな」
「は。じゃあいよいよあの男がくたばるってか」
もちろんそれを嘆く気持ちなど微塵もない。むしろ自分がとどめを刺したい。といって、真剣勝負に横やりを入れるほど無粋ではない彼であった。
「しかし、お前も知ってのとおり、彼女が最も目をかけていたのはあの男だった。彼女はなんとしてもあの男を救いたがっていた」
いつかの光景を思い返しながら短髪の青年はつぶやく。
「もし、まだ奴に彼女の加護が残っているのならばあるいは……」
そうこうしているうちに少女は氷の剣を手に庁舎の壁を駆け上る。
決着がつこうとしていた。 |