「一体どうして君たちは人間を殺すんだい? こんな辺境に逃げ込んだ人間まで、殺して回って…………………。
 こんな蛮行に何の意味がある? これが次の世界の支配者である、新人類のすることなのかな?」
「どうしても何もあるまい。連中はこの星を蝕む害虫だ。
 これより我らが新たな世界を築く上で、奴らを排除するのは当然のことだろう」
 私の後方数キロの瓦礫に身を隠す彼らを見ながら、Dミリオン。
 彼らはこの地に隠れ潜んでいた、人間の難民達であった。
 先程、私が彼らを新人類の襲撃から守ったことが、今回この地における争いの発端であった。
「むしろ貴様こそ、何故連中を守る? 奴らはとうにこの世界の支配権を失った、惨めな敗残者どもだ。貴様ほどの女が、肩入れする価値はあるまい。
 なのに何故、本来同胞である我らと戦ってまで、奴らを守ろうとする?」
「……何故、といわれても、人道的な理由としか言いようがないんだけれどね。いかなる理由であれ、強者が弱者を虐げるさまは見ていられないよ。
 仮にもヒーローの端くれである以上、自分が彼らを守るのは当然のことだろう?」
 斜めにポーズを決めながら、私。
「ていうかね、とうに戦争は終わったんだ。君たちの勝利は確定した。だったらこれ以上、人間を苛める必要はあるまい。
  いい加減不毛な争いはやめて、仲直りしてもいい頃合だと思うけどね」
「それこそ馬鹿な。旧人類共と仲直り? そんなことをして何の意味がある。連中は俺達よりもはるかに劣る存在だ。にもかかわらず、俺たちを妬み、排除しようとした愚か者どもだ。そんな連中と和解したところで何になる。また裏切られるのがオチだろう。
 新たな世界を支配するのは……、我ら新人類だけで十分だ」

 新人類。それこそが今この世界の支配者である、彼らの名称であった。
 見た目だけなら人間とほぼ同じ。実は数だけなら、まだ人間達よりも少ない。
 しかし個々のスペックは、人間たちを凌駕した。

 というのも当然の話で、そもそも新人類とは、人類を改造、もしくはベースに生み出された、高性能魔導サイボーグである。故に、身体能力もREIも普通の人間をはるかに上回る。

 およそ千年前、REIドールと呼ばれた人形たち。彼等こそが新たな世界の支配者である、新人類の正体であった
 いやまあ……、要するに、私の弟たちなんだけれど。

「そのことは、貴様だってわかっているはずだ。そもそも百年前、連中の“人形狩り”に対し戦いを挑んだのは、ほかならぬ貴様だったではないか」
 冷たい声に、僅かに熱を込めてDミリオン。
「その貴様が何故、今になって我らの邪魔をする? なぜ旧人類どもを庇う? 神聖なる我らが祖にして、人間どもを滅ぼした英雄、グレイナイン・KZ・ドリムゴード!」
 どこか悲痛にも聞こえる彼の叫び。
 私はそれに即答することができなかった。