「第一発見者は、ビルに忍びこんだコソ泥だそうです。年齢は50代前半、男性。
このビルがジ・ワードGOの運営会社だと知った彼は、3日前、金目の物目当てに窓から侵入。一通り探索を終えた後、最後に立ち寄った地下倉庫で、氷漬けになった十人分の遺体を発見したそうです」
 メモ帳片手に白マントの少女。先程、彼女の友人から横流しされてきた、地元警察の捜査情報であった。
「慌てて逃げ出した彼は、近くの公衆電話から匿名で通報。翌日、駐車場の防犯カメラに彼の姿が写っていたことから、地元警察が任意聴取をしたそうです。間もなく彼は犯行を自供。あ。あくまでビルに忍びこんだ件について、ですが」
 と、敷地の西側にある駐車場、その入り口に備え付けられた防犯カメラに目をやりながら、白マントの少女。
「第一発見者がコソ泥、か」
「彼が運営スタッフ達の死に関与した可能性は低いと考えられます。初老の男性が一人で十人殺害するのは困難ですし、被害者達の死因は凍死。それも検死魔法の結果、彼らは死後、一年近く経過しているようです」
「凍死したのは一年前? それも十人まとめて、かい?」
「はい。おそらく地下倉庫に入った際、入口のロックが壊れ、閉じ込められてしまったのでしょう。同時に、倉庫内の冷却設備が暴走し、氷漬けになってしまったものと思われます」
「冷却設備の暴走で氷漬けって……。その倉庫は、巨大冷凍庫かなにかだったとでもいうのかい?」
「まさにその通りです。もともとこのビルは、五年前まで食品加工工場として使用されていたものだそうです。それを運営が安く譲り受け、ゲーム会社として利用していたのだとか。巨大冷凍庫はその名残ですね」
「だとして、運営スタッフは何のために、地下倉庫に入ったんだい? それも十人そろって」
「わかりません。扉のロックが壊れた理由も不明です。先生……。これは事故なのでしょうか? それとも何者かの仕業?」
「―――」
 少女の問いかけに、数秒程、青年は黙していたが、
「今の段階では何とも。ただ、どちらであってもおかしくはないだろう。ビルは老朽化していたし、彼らは各方面から恨みを買っていた。どちらであっても自業自得。だから―――、問題となっているのはそこじゃなくて、だ」
 と、ネトフォをいじりながらに黒髪の青年。そこには先程ダウンロードしたジ・ワードGOのタイトル画面が表示されていた。
「運営スタッフが全員死んでいたというのなら……、このゲームを運営していたのは一体誰だったんだ?」
 モニター上を動き回るディフォルメキャラ達。
 運営スタッフ達が死んだ後も、何事もなかったかのように、ゲーム内の世界は続いている……。