そうして天に昇っていくクロくんの意思を、ぼくラット=アンダクルスターJr.は海底から見送った。
「これで、大丈夫かなあ」
 正直言えば不安はある。
 ひさしぶりに会った彼は、相変わらずな彼のままであった。
どこまでも不器用で、どこまでも苦労人。どんなペルソナをかぶったところで、そういうところは変わらないものらしい。
「ま、だからこそサポートのし甲斐があるのだけれどね」
 ここでの出来事は夢のようなもので、起きたところで覚えていられるとは限らない。
 それでも、少しは彼の心の負担を軽くできたのならばよしとする。
「ここからは、本来のパートナーさんの役割だしね」
 所詮僕は昔の相方だ。あまりでしゃばるのも悪いだろう。
 静寂に戻った暗闇の中。胸に蘇るのはかつての冒険の日々の記憶。
その中で彼からはたくさんのものをもらった。人の顔色を窺って生きることしかできなかった僕に、立ち向かう強さをくれたのも彼であった。
 たとえそれが原因で命を落としたとして、いったい何を恨む理由があろうか。
再び暗闇に帰る手前、最後にもう一度振り返る。
すでにその役目は彼女に譲っているが、今はあえてこう言おう。

「進め……。相棒」

 君の望むものは未来にあり、過去は適度に懐かしんでくれればいい。
 だから今はつまらないことに捕われず、どこまでも突き進め。
「そうすれば、きっと……」


 そうして彼の戦いは終盤戦に突入し、全てに決着がつくことになる。

                          


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