爆音に次ぐ爆音。駆け抜ける熱風と石粒。 ドームの鉄骨が揺れるたびに、また一つホールにクレーターが築かれる。 「いったいなにが、どうなって――」 振るわれる斬撃の嵐から逃げる一方の俺。 「どうした、クロラット。逃げてばかりでは勝機はあるまい。その手にある宝剣は飾りか?」 そう問いかけてくるのは、背後から迫る必殺の騎士。 しかし冗談ではない。彼の剛腕から振るわれる一撃の重さは、クロバードのそれとはけた違い。初撃こそ紙一重でかわしたものの、下手に受けたら腕ごと持っていかれただろう。 ゆえに今は逃げ回りつつ、対策を立てるだけで精いっぱい。 「とにかく、やばい」 原理は不明だが、彼の放つ一撃の威力は生前のそれとほぼ同等。死者を召喚する魔法はあれど、彼ほどの人物を完全に再現できる使い手はそうはいまい。当然、クロバードにそんなまねができるはずもなく……、 「となると奴の言うとおり、DGシステムの創造力か」 図らずも「DGシステムにはある程度の“生み出す力”がある」という俺の推測の裏付けは取れたものの、今それがわかったところで何の役にもたたない。 むしろ絶望感が増したくらいだ。というのも秘宝の鍵によるナイツの召喚。仮にそれがDGシステムに依存し、しかも無制限に行うことができるのだとしたら……、 「そう。それは集めた鍵の数の分だけ、ナイツを手ごまとして扱えるということだ」 と、横から口をはさむクロバード。 見れば、その手には新たな二本の鍵。 「まずい……!」 光輝く秘宝の鍵。 閃光とともに現れたのは新たな二人のナイツ。しかも、またしても俺の顔見知り。 「げ……!」 それは俺が暗黒シティにおいてトップクラスで会いたくなかった二人。 片や小柄で蒼髪の少年。片や大柄で紅髪の男。 「クリムゾン、クラウド……!」 それも表と裏のボスの二人セット。暗黒シティ最悪の始末屋コンビ。 「ひ、ひひひ久しぶりだね、ブラックス」 どもりながら言うのは蒼髪の少年、ナイツ200ことブルース=ドゥーラク。 「よくも、このまえは裏切ってくれたねえぇ。僕たちは、協力関係にあったと、いうのに……」 26人の日のことを言っているのだろう。しかし、言いがかりもいいところだ。 あんたこそ俺を陥れる気満々だったじゃないか。俺はやられる前にやっただけ。まあ、あんたがクロバードに殺されたとき、ほっとしたのは事実だけれど。 「悲しいよ、ブラックス。君がぼくをうらぎるなんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 絶叫する蒼髪。1パーセントの理性で押さえつけられていた99%の狂気が爆発する。蒼髪の裏に隠れていた真紅の目、それが俺を睨みつけ、 「しまっ……っ」 電撃のごとく全身を駆け抜ける痛み。迂闊だった。今の俺のサングラスは特殊コーティングの施されていない非常用のものだったっけ。 クリムゾンクラウドの真紅の瞳には一種の暗示能力がある。何の対策もなくその眼を見てしまった俺は平衡感覚を失い尻餅をつく。 「ふはは!でもうれしいよ、ブラックス。こんな形でもまた君に逢うことができて。今度こそ僕の手で、君をバラバラにしてあげるよ!!」 袖から取り出したナイフの束をまとめて投擲しながらブルース。さらに横からはボクシングスタイルで突っ込んでくる偽ムゾンクラウド。 「どうやら、ここまでのようだな」 と、背後には上段の構えの必殺の騎士。 「多勢に無勢は好まぬが、これも強制でな。許せ」 そういって、ハルバードを振り下ろす。 ああ、やっぱり強制だったのか。などと、納得している場合ではない。 投擲ナイフに拳にハルバード。三者三様の必殺の一撃。 歩くことさえままならぬ俺は、今度こそどうすることもできず……。 立ち上る爆炎と轟音。 こうして俺、クロラット=ジオ=クロックスは、あっけなく、無残にこの世から消滅したのであった。 |
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