―――――― そう、クロバードは確信しただろう。 俺だってそうだ。 しかし、そんな時だった。 「何をやっているのかなあ、クロ兄ちゃんは」 爆炎の中から、高らかで美しい少女の声が響き渡ったのは。 「む?」 第三者の声に警戒するクロバード。 「せっかく手札を持ち合わせているのにねえ。一つも使わないまま終わるだなんて、笑い話もいいところだよ」 あきれたような面白がるかのような少女の声。 それに、 「仕方なかろう。クロラット殿は慎重な方。うかつに手の内をさらすより、まずは状況を見定めているとみた」 そんな、どこか老成した少年の声が続いた。 次第に晴れていく土煙。ブルースと偽ムゾンは健在。そして……、俺もまた健在であった。 というのもブルースのナイフと偽ムゾンの拳は俺に届いていない。 なぜなら……、 「そうなの?でも今のはかなりやばかったんじゃない?」 「だから弘法も筆をあやまるとわけで……。故に我ら無断出撃も大目に見てもらいたいというか」 俺とクリムゾンコンビの間に立ちはだかる二人の人物。否、片方は人ではなかった。 「君たちは……」 片や白銀のドレスに身を包んだ小柄の少女。 もう片や青色の鱗を纏う、全長10mほどのドラゴン。 俺もよく知る二人の子供。つい先日まで同盟関係にあった彼らは、 「エンジェスちゃんにダイスケ君!?」 「久しぶりだねえ、クロ兄ちゃん。相変わらずヘタレしてた?」 「お久しぶりですクロラット殿。お元気そうでなにより」 驚く俺に対し、笑顔で振り返るエンジェスちゃんとダイスケくん。 彼らこそ暗黒シティの有名ちびっこナイツこと、みなしご7人ナイツのツートップ。 ナイツ209 機動聖女エンジェス=ゼットシズマと、ナイツ73 闘龍ダイスケ=リューグージ。 いずれも未成熟ながらも、凄まじい素質を秘めていた少年少女。 その彼らのビームアクスが、鋼の鱗が、クリムゾンコンビの攻撃を受け止めている。 「どうして、君たちが……」 とまどう俺に対し、 「どうもこうもねーよ。あんたがだらしねえからに決まってんだろ」 と、背後からかけられる新たな声。 振り向いて、ぎょっとする。 俺の前方50センチで静止しているハルバードの切っ先。それを受け止めていたのは、一本の……金属バット。 超重量のハルバードをバット一本で受け止める男。そんなことができるのは俺の知る限りにおいてただ一人。 自身のオーラで身近な道具を強化し、軍人顔負けの喧嘩殺法で敵を滅殺する彼の名は、 「ゴウ=カガジマくん!?」 「よう。苦戦してるようだなあ。へっぽこ探偵」 そういってにやりと笑うのはやはり、暗黒シティ番長四天王の一人。かの桃太郎番長のライバルと謳われた金太郎番長、ゴウ=カガジマその人であった。 |
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