そんな“俺”が切り裂かれる様を、俺は奴の背後から見ていた。

 黒之葛家奥義、闇夜の剣。
 金剛石をも切り裂くその斬撃の唯一の弱点をあげるとするのならば……、それはあまりに切れ味が“鋭すぎる”ことだろう。
「む……?」
 だから奴は気付くのに遅れた。
 人一人を切り裂いたにもかかわらず……、その手ごたえがあまりに軽かったことに。
「これは……」
 真っ二つに切り裂かれた“俺”の体にノイズが走る。
 粒子を発し、薄れゆく“俺”。
「3Dホログラム!?」
「正解だ!」
 奴の背後の光から飛び出す俺。
「クロラット!?」
 驚愕するクロバード。
「どうして――!?」
 クロバードまで残り5メートル。

 奴からみれば 不可解なことだらけだろう。
 何故切り裂いた俺が立体映像だったのか。いつの間に立体映像と入れ替わったのか。そもそもこんな高精度の立体映像を自在に、リアルタイムで動かせる者がいるのかと。

 ―――だがいるのだ。それは魔道コンピューターの天才にして、3Dアニメーションおたく。
 こと、“俺”の3D映像を動かすことにかけては天才的で、歩幅から呼吸、果てはヘモグロビンの流れまで再現できる唯一の人物。

「クロ……くんの…」

 本当、いつからそこにいたのやら。
クロバードの左手、ドームサイドの観客席。
 白きコートを纏い、黒き魔道コンピューターを展開して、こちらを見下ろす彼女は、


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