「ミサイルストーム!」
「ゴールドブレス!」
「幻獣召喚!」
「レーザーキャノーン!」

 解き放たれる暗黒シティ最大レベルの暴力。
 巨大な光と熱が、轟音と共に地を駆ける。

「グレイトナックル!」
「ダイナミック張り手!」
「ツインKマニウムキャノン!」
「ウルトラU!」

 閃光は相対する両陣営から。
 コンマ1秒後、二つの極光は激突し……。

「アルテイムバニッシャー!」
「オーロラキャノン!」
「斬月Z!」
「陽炎斬り!」

 直後、凄まじい爆発が起きた。
「……………っ!!」
 ドームが、否、暗黒シティそのものが確かに揺れた。
 衝突したエネルギーの余波が、ドームの天井を粉々に吹き飛ばす。

「ワルトリアバスター!」
「ゲゼジウム光輪!」
「孔雀と亀の舞い!」
「サンダァァァァ、ブラスト!」

 光に包まれた空間の中を、“俺”は駆け出した。
 衝撃波で吹き飛ばさなかったのは、体裁を気にせず伏せていたためである。
 白一色の視界に先ほど焼き付けた景色を投影し、あとは一直線に突き進む。
 こちらの視界が効かないということは他の連中も同じということ。おそらく、この世で最も贅沢な目くらましだろう。
 無論、こうもREIが吹き荒れる中では気配を探ることもできまい。
 クロバードまで残り80m。

「オーバーソード!」
「プラズマアンカー!」
「ぐあああああああ!」
「黄金の右フック!」

 至近距離で爆発。
 流れ弾をくらったらアウトだがこればかりは運任せだ。暴風をかいくぐり前へと進む。
 倒れていく仲間達。消し飛ぶナイツ達。
 その彼らの最後の雄姿を、不覚にも美しいと感じてしまった。
 クロバードまで残り60m。

「ダイナマイトブロー!」
「それじゃあまたね!クロ兄ちゃ……」
「ライトニングザッパー!」
「ご武運を、クロラット殿……!」

 光の先に、ついにクロバードの姿をとらえた。
 奴もこちらに気付いたらしい。
「どこまでも姑息な!クロラット!」
 言いながらも、懐から新たな鍵を取り出し、かざす。
 クロバードまで残り20m。

「クロラット!すまない!」
「これで義理は果たした……かな?」
「おのれ、ブラックス……!」
「気張りなさい、ドブネズミ……様…」

 光とともに現れたのはナイツ221機動男爵マルコフォーレ。
 その巨体が眼前に迫る。
「まだ手札を残していたか……!」
 少しだけ計算ミス。気付かれるのが3秒ほど早かった。
 潜り抜けるようにも間に合わず、避けるにも距離が足りない。 
「どうすれば……」
 潰されたところで支障はないが、今感付かれるのはまずい。
 やむを得ずいったん退こうとしたところで、

「いいえ!お進みください!マスタークロラット!」

 と、自分を追い越し機動男爵にとびかかる誰か。



 一瞬見えた赤い包帯。その誰かは機動男爵の巨体を蹴り飛ばす。
「セブン!」
 姿を確認するまでもない。それは俺のもう一人のパートナー。REIドールナンバーセブンだった。
「なぜ君が……」
「足手まといなのは百も承知!しかしお許しください!あなた達とともに戦うことは自分にとって唯一の存在意義にして誇りなのです」
 そのまま機動男爵を押さえつけながら背中越しにセブン。
「どうか死力を尽くしますが故、ともに戦うことをお許しください!」
 片腕で機動男爵を殴りつける。
「………足手まといなんてことはないさ」
 残念ながらその雄姿を確認している余裕はない。その横を通り抜けながら、
「十分役に立ったよ……。ぼくの弟分」
 クロバードまで残り10メートル。

「クロラ……!」
「君に勝利を……!」
「あなたの望むままに……!」
「思うままにすすめ……!」

 ついに射程にとらえたクロバード。
 しかし、忘れてはいけない。クロバードは俺と違う。たとえナイツの力を借りなくとも奴自身の戦闘能力は……、
「調子に……」
 やはり取り出した闇夜の鍵。
 それは背後の影を吸収するかのように巨大化する。
 三日月を描いた巨大な刃は、かの怪盗物語に登場する宝剣を模したといわれる、黒之葛家奥義、闇夜の剣。
「乗るなよ、半端者が!」
 振り下ろされる闇夜の剣。
 神速の斬撃は、“俺”、クロラット=ジオ=クロックスを頭から真っ二つに切り裂いた。


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