空は快晴。日差しは穏やか。時折窓から吹き込む風がカーテンを揺らす。
 暖かな風が前髪を揺らすたび、まるで自分が平和な世界にいるかのような錯覚に陥る。
 いや、錯覚というほどでもないか。ここ数日の暗黒シティは近年でも珍しく平穏な日々が続いていた。
 ペタンペタンと書類に班を押す。ここは市長軍本庁舎20Fの執務室。
 例えばこんなだだっ広い部屋の中心で、俺が事務処理作業に没頭していられるのも、今が平和の証と言えるのではなかろうか。
「つーか、これ俺がやる必要あるのかね」
 なにかと争い事に身を置くことが多かった自分としては、どうにもこの平和な時間というものに馴染みにくい。平和慣れしていないということだろうか。まるで妖精郷にでも迷い込んでしまったかのような夢見心地な気分。
 窓から入り込んできた黄色い蝶々が舞い、水色のカーテンは風に揺れる。時計を見ればまだ10時。昼食まで時間もある。

 要するに俺は………、暇だった。