その日は唐突に訪れた。
「突然だけれどグレイナイン、今回の旅で君クビだから」
 田舎町の民宿にて、モーニングコーヒーをすすりながら先生はそう告げた。



「は?」
 思わず間抜けた返事をしてしまう。
「先生。それは、どういう……?」
「そのまんまの意味だよ。君との旅は今回限り。次の目的地でお別れってこと」
 にこやかに言う先生の目は、しかし全く笑っていなかった。
 それでわかってしまった。
 これは冗談でもなんでもなく、先生は次の目的地で自分を切り捨てるつもりなのだと。
「いつまでも子守りをしているほどね、ぼくも暇じゃないんだよねー」

 わかっていた。先生にこのような一面があることは。
 普段温厚な先生が時折こういった冷酷な一面を見せるの初めてではなかった。
 しかしそれでも、今までそれが自分に向けられたことは一度もなかったから、愚かにも油断してしまった。
 どんなことがあっても、自分が先生に見限られることはないのだと。