「革命結社空冴?」
 突然の彼女の勧誘に対し目を瞬きさせながら自分。
「はい。正確にいうのならば空冴、第十二部隊“空猪”。それが、ぼくが所属する部隊となります。加えていうのなら、隊長も務めているわけですが」
 クウチョ。直訳するのなら空の猪だろうか。
 またしても、初めて聞く名前である。………いや、似たような名前だったらどこかで聞いたような気もするのだが。
「セブン兄さんにはしばらくぼくの部隊に所属していただくことになります。本当はエトさんの了承を得なくてはならないのですが、ちょっとそれができる状況ではありませんので……」
 そんなこといわれても、まず自分が了承していないのであった。
 暗黒騎士団だの、最後の戦いだの、さっきから彼女は何を言っているのか。いや、それを言うのなら、そもそも彼女は何者で、というかさっきから兄さんとか呼ばれているのは気のせいか?
「じきにわかります。いえ、あなたはすでにわかっているはずです。兄さんのGHシリーズへの書き換え作業は完了しているはず。ならば敵や自身についてのデータについてもインプットされているでしょう」
「GHシリーズへの書き換え作業………」
 言われて思い出す。
 先ほど始まったOSの書き換え作業。網膜モニターの隅っこにはCOMPLETEの文字が点滅していた。
 クリックすると、大量のデータが展開される。
 書き換えられたデータ。それに伴う性能の変化。さらに注意事項、操作マニュアル、ワンポイントアドバイスなどなど。
「なんだ、これは……。コア出力180%まで上昇。身体機能、回復機能の強化。さらに8番から15番までの兵装を開放。斬殺兵器、チェーンソーカリバー………?」
 驚くべきことに自分の性能は以前よりはるかに向上していた。さらに出力不足で封印されてきたいくつかの兵装が解放されている。
 データ通りならば、今の自分の戦闘能力は、以前の倍近くまで上がっているのではあるまいか。
「DHシリーズへの書き換えが完了したことで、戦闘用REIドールとしてのあなたの本来の機能が解放されました。今のあなたならば三獣騎クラスの英雄とも互角以上に戦えるはずです」
 静かに告げる黒マントの少女。
「どうかその力でぼくたちと共に戦ってください、兄さん」
「だからそんなこといわれても………」
 いまだに自分はわからないことだらけであった。与えられた情報はあまりに膨大で、とても短時間で処理しきれるものではない。
 唯一わかるとすれば、彼女が自分に助力を頼んでいおり、その目がとても真剣であるということくらいだろう。
 しかし戦えといわれても、いったい何と戦えばいいのか。この崩壊した暗黒シティにおいて、どこの誰と戦えというのか。
「あなたもよく知っている人です………。でも、以前のあの人とは違う。あの人は変わってしまった。今のあの人はすでに暗黒シティを“最悪”に導くだけの存在………」
 ここで彼女の表情に影が差した。
「故に止めなければなりません。ぼくたちの手で、あの人を。かつての暗黒シティ英雄である、あの――――――」
 そう、彼女が声を張り上げたところで、

「あはははは。まーだあきらめていなかったのか、君は!」

 背後からそんな笑い声が聞こえた。


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