深海のような暗闇の中を俺の意識は漂っていた。
 周囲には何もなくただ静か。生命の息吹も感じられず、誰に言われるまでもなく、ここが生と死の境界線であることを理解する。
 なぜこんなところにいるのかと考えて、思い出したのは先ほどの戦いの記憶。
「何やっているのかなー、俺は」
 間抜けにも程がある。口車に乗せられた挙句、隙をつかれて火葬とか、初歩的なミスどころの話ではない。
 こんな大舞台でヘマをかますなんて、やはり……、
「奴の言うとおり、俺は黄金の夜にたどりつける器ではなかったということかな?」
 そういうことなのかもしれない。
 考えてみれば当然のことか。そもそも俺の戦闘能力は最弱で、周りの連中は化け物ぞろい。俺が勝ち抜ける可能性など、万に一つしかなかったのだ。
 そして、その万に一つの奇跡をもってここまで来たのにもかかわらず、最後に待ち構えていたのはとんでもない裏ボスであった。
 クロバード―=ルル=クロックス。
 俺が理想的な人生を歩んでたどりつくはずの、俺が最も勝ちえない相手。
 要するにクロラットにとって、このゲームは最初からクリアできないようにできていたのだ。
「こんなことなら、さっさとあきらめておけばよかったかたなー」
 そうすれば俺も痛い思いをしなくて済んだはずだ。そうすれば彼女も命を落とすことはなかったはずだ。そうすればその他大勢の顔見知りを巻き添えにすることもなかったはずで……。
 要するに、俺の妄執こそが多くの人間たちを悲劇に追いやったということか。
「でも、これで……」
 ようやくあきらめることができる。
 身も心も燃え尽きた。今度こそあきらめるしかないだろう。悲劇の元凶は消え、迷走した物語は終わりを告げる。
 やはり俺には、黄金の夜を追う“資格”はなかったのだ。
 そうして俺の意識はゆっくり暗闇の底へと沈んでいき……
 
「ちょ〜〜〜〜〜っと待った、クロくーん!! ネヴァ――――――、ギヴァ――――――ップ!! 」

 ……沈んでいこうとしたところで、そんなうるせー声が、暗闇に響き渡るのであった。


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