以上が俺ユニックス=F=オディセウスが結婚するに至った経緯である。あとはその日のうちに婚姻届を提出して、目出度く彼女と夫婦になりましたとさ。
 意味が分からないと思う人もいるかもしれないが、正直俺だってさっぱりわからない。まあ世の中の結婚なんて大概こんなもんだろう。多分。

 さておき、彼女との結婚生活だが、これが結局二年ほど続いた。長いとみるか短いとみるかは人それぞれだろうが、外では副官を務め、家では妻を務めてくれた彼女との生活は、それなりに上手くいっていたと思う。
 意外だったのは外ではバリバリのビジネスウーマンだった彼女が、家では思った以上に家庭的だったことか。
 そんな感じで俺自身悪くないかなと思っていた結婚生活ではあるが、それもある日唐突に終わりを告げた。

「すみませんが今日で離婚してください」

 結婚した時と同様ににあっさりと告げる彼女に、俺の目が点になったのは言うまでもない。
 何度理由を聞いたところで一身上の都合以外の答えはない。ただ俺に不満があったのかと聞くと、そうではないと否定された。
「していうのなら自身の未熟さを痛感しただけです」
 後に俺の副官に復職した彼女は答える。
「ですから私はもう自分を磨きますので」
 そういっていつものように透明な瞳で俺を見つめながら
「今度はあなたからプロポーズしてくださいね」
 そんなふうに告げるのであった。

 そんなこんなで時は流れていく。
 不条理な日々は相変わらず。しかしその中で去っていく者もいれば、出会う者もいる。
 周りにいる人間が変われば気分も変わる。思えば彼女のことを思い出すことも少なくなってきた。
 だがそれでいいのだろう。まだ彼女のところにいくまでには、片付けなければならない仕事が山ほどある。ならば今は目の前のことに専念しよう。
 それこそが俺が踏みにじってきたものに報いる唯一の方法なのだろうから。
 
 遠く彼女との思い出を背に、俺は未来へと進んでいく。


ユニックス=F=オディセウスの憂鬱