Interlude
Gold Heart!! SIDE:C



 黄金色の砂塵が舞い散る中で、自分は彼女と空を見上げていた。
 少女が真夜の鍵を上空に放り投げたのがつい先ほど。鍵は音も立てず上空で消えてなくなった。
 彼女の言う通りなら、これでお二人は無事この世界から脱出できたのだろうか。
「さて、一つだけ謝らなければならないことがあります、セブンさん」
 と、こちらに振り向きながら黒マントの少女。
「実はスペシャルな脱出方法というのは嘘でして。あなたはクロラットさんたちに合流することはできません」
「ああ、うん。そんなことだろうと思っていたけれど」
 特に驚くことなく自分ことセブン。時折送られた彼女の目配せから、そのあたりのことは察していた。
「あれ。怒っておられませんか?」
「まさか。むしろ君には礼を言いたいくらいだよ」
 嘘ではない。自分にはマスターたちを救う手段がなかった。それを代わりにしてくれた彼女に対し、感謝こそあれ、不満などあるはずもない。
「申し訳ありません。多次元間の交信には様々な制約がありまして。真夜の鍵の定員が二名である以上、あなたにはあきらめてもらう他なくて……」
「気にすることはないよ。マスターたちさえ救うことができたのならば、自分としては十分だ」
 先ほどのカタナどの姿を思い出しながら自分。
 そう。あの二人なら大丈夫。二人だけでもやっていけるはずだ。これ以上自分の力は必要ないだろう。
 もとより戦闘用REIドールである自分は、この街以外で生きることなどできない。戦わなければ生きられない自分は、どこに行ったところで災厄の種にしかならないだろう。
 ならば、自分が第二の生を受けたこの街と運命を共にするのも悪くはないのかもしれない。
「自分はここで、ゆっくりこの街の最後を見届けることにするさ」
 そう、ため息をついたところで、
「いいえ。あなたは死にません。むしろあなたの本当の戦いはこれから始まるのですから」
 と、彼女から否定が入った。
「…………?本当の、戦い?」
「はい。それはこの暗黒シティの運命を決定づける最後の戦い。あなたはそれに挑むことになる。そこにあなたをいざなうために、ぼくはこの街にやってきたんです」
「…………………?君は、マスターたちを救うために来てくれたのではなかったのか?」
「違います。確かにマスタ達を救い出せたことは、ぼくにとって喜ばしいことでしたが、要件としてはあくまで“ついで”です。ぼくがここに来た本当の理由は別にあります」
 言いながら姿勢を正して黒マントの彼女。
「ぼくはあなたに会うためにここに来たんですよ、セブンさん。あなたを戦場に導くため。あなたを仲間に迎え入れるために。すでに戦いは始まっています。しかし敵の力は強大で、今のぼくたちでは戦力が足りない。どうか一緒に来て戦ってください」
 吹き荒れる旋風の中、厳かに彼女は、
「あなたを対ゴードハード多次元戦略同盟暗黒騎士団、革命結社空冴にスカウトします。セブン兄さん」
 そう、自分に告げるのであった。


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