再び大地の震動。耐えきれず膝をつく。
「大丈夫ですか、カタナどの!」
 駆け寄ってくるセブンくん。
 ドームもすでに原型をとどめておらず、残る鉄骨もあとわずか。
 次大きな振動があれば、今度こそ崩落するのだろう。
「申し訳ありません、カタナどの。自分がふがいないばかりにマスターたちを守りきることができず……」
「気にしない気にしない。君はよくやってくれたよ、セブンくん」
 手をつき涙する彼の頭を撫でてあげる。
「結果はこの通りだけれどね……。ま、一応黄金の夜に辿り着いたし、真相も暴いたし、私たちにしては上出来でしょ」
 あとはこの街から脱出し、クロくんを蘇生できればいいのだが、さすがに現状では厳しそうか。
 空は黄金色に輝き、大気は異常な密度のREI粒子で満ちている。すでに日が沈んでいる時刻であるにもかかわらず、これは異常だ。
「本当、いったい何が起来ているのやら………」
 てっきり大崩落事件の焼き直しかと思ったが、もしかして違うのだろうか?
 もっと、とてつもないことが起こりつつあるのではあるまいか。
「わかりません。ただ決戦前、マスターKはおっしゃっていました」
 と、涙を拭きながらセブンくん。
「これは来るべく終末。暗黒シティのの果てに待つ、約束された事件なのだと……。すなわち暗黒シティ十大事件第一位。ゴードハー……」
 と、そこまで言いかけたところでセブンくんの顔色が変わった。
「え……?なんだ、これは。何の、数値だ?」
 頭を押さえてセブンくん。
「GH指数上昇……?何?自分に搭載されていた未知のセンサーが反応しているとでもいうのか……?」
 肩を震わせてセブンくん。
「未確認アプリケーションの起動。緊急コードKEN-S !? REIドールDGシリーズからGHシリーズへの書き換え……。更新拒否不可能 !? そんな………、自分の中にこんなプログラムが隠されていたなんて……」
 見れば顔面真っ青である。
 見るに堪えずその肩を抱き寄せようとするも、
「!」
 そこでひときわ大きな地響き。
 私の右手にあった巨大な鉄骨。それが、こちらに倒れこんでくる。
 鉄骨の重さは10t以上。逃げなければ死ぬ。
 しかし、そういう気にはなれなかった。
 だって私の隣にはクロくんの死体と、蹲るセブンくんがいる。それを置いて一人逃げるなんてどうしてできるだろう。
「やれやれ」
 どうやらこれで終わりらしい。
 でもまあ悪くはないか。どのみち遠からず死ぬ運命。ならば彼らと同じ場所で死ねるなんて喜ばしいことだろう。
 ゆっくり倒れこんでくる鉄骨。瞼を閉じ、その運命を受け入れ入れる。

 しかしその時、

「いいえ、あきらめてはいけません!」

 凛とした声が、黄金色の空の下に響き渡るのであった。


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