PART 1







そうしてまたいつもと同じ一日が始まる。

5時起床
6時朝食
7時登校
8時授業開始
それは何年も繰り返されてきた一日。

6歳小学校入学
12歳中学校入学
15歳高校入学
18歳就職(一部市民は大学へ進学)
21歳結婚
24歳出産
30歳子供が小学校へ入学
それは何百年と続けられてきた人類の営み。

今日と同じ一日が明日も繰り返され、今世代と同じ一生が次世代においても繰り返される。未来へのレールは定まっていて、そこからずれることはない。その必要もない。
今日も私は路面電車で、学校へと向かう。過ぎ行く建物の形は皆同じ。
 雲一つない青空を見つめ、ため息を一つ。

月曜日は晴れ。
火曜日は曇り。
水曜日は雨。
木曜日が曇りで、
金土日と晴れが続く。

4月から6月は春。
7月から9月は夏。
10月から12月が秋。
1月から3月が冬。

 今日は3月31日。
 明日になれば、街頭の桜も花開き、春一番が吹くのだろう。
 それはすでに決まっていることで、一日だってぶれることはない。

 ここは完成された世界。
 不確定なことなど何一つない。
 人よんでREIショック。
 人類全てがREIソーサーとして覚醒してもう長い年月が過ぎた。

 万能力REIソーサー。
 それはあらゆる事象を制御する神にも等しい能力。
 この能力を手に入れたことで、人類は真の意味で霊長類となった。
 もはやこの地上に人類を脅かすものなど存在しない。今や自然災害や星の軌道ですら人類の管理下にあるのだ。

 さらにオーバーテレパシーによって人類は互いのことを理解しあい、地上からすべての争いは消失した。
 もはやこの世界に悲劇は起きない。何かが失われることもない。
 人類は完全な平和を手に入れたのだ。

 誤解なきよう言っておくと、決して自由が失われたわけではない。その気になれば路地裏に入り込み学校をさぼることだってできるし、校舎裏でたばこを吸うことだってできる。
 だがその必要がない。
 なぜならREIソーサーの能力の一つ、因果予知によって、どのように生きるのが最善かはわかっているのだ。
 最善の道がわかっている以上、あえてそこから踏み外す理由はない。興味本位で踏み外す者もいるが、結局無意味と悟りこの道に戻ってくる。

 穏やかな日常はきっと明日も明後日も続いていくのだろう。百万年後も一億年後も同じかもしれない。
 何も悪いことなどない。何も不都合なことなどない。
なのに、

「何か、物足りない気がするのはなぜだろう」

 最近頭に浮かぶこの疑問。
この穏やかな世界こそ、かつての人類が追い求めた“黄金郷”だったはずだ。
 なのに、人々の笑顔があふれ、美しい草花によって彩られたこの景色が、時々無機質で灰色一色に見えてしまうのはなぜだろう。
「どうしたんだい君。さっきからボーっとして」
 隣から心配そうに話しかけてくる学友の声。しかしそれもどこかよそよそしいものに感じられる。
「大丈夫かい?どこか具合でも悪いのかい、キィ……」
 いったい何がおかしいのか。何が不満なのか。
 私がその疑問の答えに至ったのは数億年後のことであった。

 要するにこの世界は……………………、つまらないのだ。



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