「え?」
 声に反応して瞼をあける。
 と、同時に凄まじい閃光と爆発音。超質量の鉄骨が一瞬で爆散する。
「な……」
 誰の仕業か、舞い散る赤茶色の鉄粉。
「誰……?」
 声は確か頭上から。
 見上げると、先ほどキィが飛び去った先に、一羽の鳥が浮いていた。
「あれは、フェルコーン?………いや」
 特殊合金製の鳥型機動獣騎。それは私のよく知るフェルコーンではなかった。
 白一色のフェルコーンに対し、その機体は黒一色。さらにサイズも三回りほど小さい。
「あの機体は……?」

 カタナ=シラバノの知るところではなかったが、その機体こそフェルコーンの兄弟機“黒翼”。
 遠くニューワード大陸において、大破した天翼をフェルコーンのデータをもとに改修した、最新鋭の鳥型機動兵器。
 黒之葛家当主、狂之助左衛門が彼の弟のために造らせた、黒鳳=流留=黒之葛専用“魔法獣騎”である。

「あきらめが早いのはあなたの悪い癖です」
 と、黒い鳥の上から声。その胴体部分には誰かが立っていた。
「え……?」
 しかもそれは私もよく知る、シルエット。
 黒マントにサングラスの少年。



「クロくん………!?」
 しかしそんなはずはない。だって彼は今も私の横で死んでいるし。
「それに…………」
 先ほどの声は、少年というよりも少女のものであった。
 見れば体格もクロくんより一回り小さいし、顔つきも少し幼い。
「あなたは一体………」
 クロくんと似て異なる少女。そんな彼女を、なぜだか私は知っている気がした。
 あれはいつだったか。そう。確か、夢の中で………、
「まだ終わりではありません!」
 と、私の動揺などお構いなしに少女は告げる。
「まだ道は残っていますよ!“マスタ”!」

 “この世界”のカタナ=シラバノの知るところではなかったが、彼女こそ本来クロラットたちのパートナーとなるはずだった少女。
この黄金の夜事件を解決に導き、黄金探偵の異名を世界に轟かすはずだった運命の人形。

 すなわちREIドールDGシリーズ9番騎。
 この世界においては存在しないはずのミッシングナンバー。

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