「クロバード!?」 白銀の魔道石で造られた地下空間で、市長ジャッジ=アンダクルスターは叫んだ。 「いったい、何がどうなって……」 中央にはスーパー魔道コンピューター。その上には一人の少年が立っていた。 黒いマントに赤いスカーフの少年。彼は荒れ狂う暴風の中、構わず不気味な笑みを浮かべる。 「どうやら、とんでもないことになっちまったようだな」 と、市長の横で呟いたのは、黒いコートをまとった金髪の少年であった。 「DGシステムの暴走が大変なものを生み出しちまったらしい。そして俺の勘が正しければ、状況は極めてやばい」 セリフとは裏腹にマイペースな少年。しかし見るものが見ればその表情に微かな戸惑いが見て取れただろう。 「くく、く」 微かに笑う黒マントの少年。 「俺の、名はクロバード…。クロバード=ルル=クロックカス。この世、すべての光を奪い尽くすもの……」 そういう少年の背後には霧のような黒い影。そこから噴き出したREI粒子が空間内に暴風を巻き起こす。 「クロック“カ”ス……?」 少年のいうことに思い当たることがあったのか、眉をひそめて金髪の少年。 「それはうちの一族の忌み名じゃないか。………まさか、“怪盗物語”が実在したとでもいうのか……?」 両手の二丁拳銃を握りしめる。 「どういうことだ、ブギーボーイ。いったいクロバードに何が起こった!?あの黒い影はなんなのだ!?」 「詳しいところはなんとも。まあ、あの影が黒鳳によくない影響を与えているのは確かだよね」 あきれたように驚いたかのようにため息をつきながら金髪の少年。 「おそらく……、DGシステムの創造力が、俺と黒鳳のデータから再現したのだろうが。しかし、何故俺でなくて黒鳳に……」 らしくもなく狼狽する市長を余所に、現状を分析する。 「だからやり過ぎだといっただろう、ブギーボーイ!君がクロバードを追い詰めなければ、彼がDGシステムを暴走させることは……」 「え〜?でも、DG計画の秘密を知ったものは生かしておけないっていったのは、あんたじゃない?」 「言ったけどさ!でも生け捕りにでもすれば、監禁するなり記憶改変するなり手段はあったわけで……」 「やだなあ。半端なマネをしたら返り討ちっすよ?うちの兄弟喧嘩は常に殺るか殺られるかで……」 「喧嘩している場合じゃないですよ、二人とも!」 と、二人の間に割って入る新たな声。 「今はクロくんを助けることが最優先です。あの影がよくない存在であることは明白。一刻も早く何とかしないと、クロくんにとっても、暗黒シティにとってもよくない事態を招く気がします」 二人の背後に立っていたのは白髪でメガネをかけた小柄な少年であった。 普段は温厚を絵に描いたかのような少年である彼は、かつてない強い眼差しで黒マントの少年を見つめる。 「そうはいってもなあ。あれはちょっと俺達の手には余るかもしれないぞ?伝承が正しければ、あれはうちの一族が生み出した最悪の魔王だ」 右手で黄金銃を回しながら金髪の少年。 「それにあの影を攻撃することは黒鳳を攻撃することと同じだ。五体満足で黒鳳を救い出すのは至難の業だぞ?」 「それは、僕が何とかします。彼は、クロくんは僕のパートナー……。彼に何かあったときそれを助けるのは僕の責務」 手には一本の白いナイフ。 ある種の決意を胸に秘め、駆け出す白髪の少年。 「それでは参ります!父さん!ブギーさん!援護をお願いします。」 「待て!ラット!」 そんな市長の絶叫を背に、向かってきた少年のことを覚えている。 「そうだ……。あの日俺とラットはDG計画の真相を知ってしまった……。それで、市長たちに追い詰められて……」 結果、試験起動中のDGシステムを暴走させてしまったのだ 「そしてお前は俺を救うために……」 |
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